がん遺伝子パネル検査について

医療機関のみなさまへ

がん遺伝子パネル検査のために受診を希望される患者さんがおりましたら、下記の①「がん遺伝子パネル検査と検体についてのご案内」、②「がん遺伝子パネル検査の流れ」をご参照の上、がん遺伝子パネル検査のご準備をお願い致します。
また、患者さんへ③「がん遺伝子パネル検査をお考えの方へ」をお渡しし、当院へ来院する時までに動画を視聴して頂きますようにお願い致します。

提出書類

医療従事者向け「がんゲノム医療」に関する教育用動画(10分30秒)

動画視聴後は,アンケートにご協力願います。

がんゲノム医療 from 『未来がんプロ』秋田大学事務局 on Vimeo.

がん遺伝子パネル検査を希望される患者さんへ

秋田大学医学部附属病院で「がん遺伝子パネル検査」を希望される方はこのページをお読みになり、内容をご理解いただいた上で、担当医にご相談下さい。他の医療機関に通院中の患者さんは当該医療機関の担当医を通じて、本院地域医療患者支援センター・がん相談支援センターへご相談願います。

がんゲノム医療(パンフレット)(第3版)
※患者さん向けに分かりやすく説明したパンフレットです。

患者さん向け解説動画(※ 当院を受診する前に必ずご覧ください。)

(※がんゲノム情報管理センター(C-CAT)作成)

1.がんゲノム医療について


1)ゲノム医療とは

ゲノム医療とは、個人の「ゲノム情報」をもとにして、その人の体質や病状に適した「精密な医療」を行うことを言います。具体的には、これまでの採血や画像検査などの一般的な検査に加えて、品質と信頼性の担保されたゲノム検査を用いて診断を行い、最も有効な治療・予防及び発症予測を患者さんに提供することを指します。現在の医療では、様々な臨床検査の結果によって診断を行い、診断された疾患の治療ガイドラインに沿って治療を行います。同じ疾患を患っている患者さん全員に同じ治療・投薬を行うということです。しかし、同じ治療・投薬を行なっていても、ある人は効果があったり、ある人は効果がなかったり、またある人は合併症を起こしてしまったり、重篤な副作用によって場合によっては死亡してしまうなど、個人によって効果や副作用は様々です。
がんゲノム医療では、個々人のがんのゲノム解析を行い、最適な治療法や薬剤の選択を行うことで、治療の効果を最大限に引き出し、副作用を最小にとどめるなど、個人の病態を考えた最適な医療を提供できると期待されています。

2)ゲノムの基礎知識

  • 遺伝子とは

人間の身体は、「細胞」という基本単位からなっており、遺伝子とは、細胞の基本構造をなすタンパク質を合成するための、設計図のようなもので、親から子へと受け継がれます(遺伝)。細胞の中心に「核」と呼ばれる部分があり、この中の「DNA」が「遺伝子」として働いています。個々の細胞は、この遺伝子の指令に基づいて合成されたタンパク質によって役割を果たし、人間の体は健康に維持されています。

  • ゲノムとは

遺伝子は非常に長いDNA鎖でできています。ゲノムとは遺伝子を含むDNA鎖全体を指し、全ての遺伝情報が含まれます。

  • がんの成り立ち

細胞が分裂する時に遺伝子を複製(コピー)するため、同じゲノム情報が全ての細胞に存在します。この遺伝子を複製する時に、間違い(変異、エラー)が起きてしまい、この変異ががんの原因になり、変異が蓄積することによってがんが惹起されます。この変異は、がんの原因になりますが、次の世代には引き継がれません。



3)がんに関する基礎知識

  • 分子標的薬

がん細胞は、様々なタンパク質の異常により増殖することがわかってきました。この異常は遺伝子の変異によって引き起こされるものです。分子標的薬は、特定の分子を狙い撃ちし、がん細胞の増殖を防いだり、破壊したりする薬です。従来の抗がん剤が、がん細胞だけではなく正常細胞も破壊してしまうのに対し、分子標的薬はがん細胞の増殖に関わる特定の分子に狙いを定めて攻撃したり増殖を抑えたりします。

  • 希少がん

希少がんとは、年間発生件数が人口10万人あたり6人未満のがんを指します。確定診断が難しく、治療薬の開発が進まないため、治療満足度が低く、重篤度と緊急性が高い疾患領域です。国立がん研究センター希少がんセンターのホームページに、様々な希少がんの解説が掲載されています。
(「国立研究開発法人国立がん研究センター希少がんセンター」 https://www.ncc.go.jp/jp/rcc/index.html

  • 原発不明がん

十分な検査を行ってもがんが最初に発生した臓器がはっきりせず、転移巣だけが大きくなったがんのことで、頻度はがん全体の約1~5%とされています。がん細胞がどこの臓器に由来するか特定することが困難なので、手術で完全に取り除くことができず、根治させることが容易でない病態であると考えられます。

2.遺伝子検査について


1)どんな人が対象になるのか

適応患者:

  1. 原発不明がんや希少がんといった稀ながんで、標準治療が確立していないがん患者。
  2. 固形がんで標準治療が終了したないし終了が見込まれる患者。
  3. 全身状態や臓器機能が保たれ、本検査施行後に化学療法の適応となる可能性の高い患者。
1あるいは2の患者で3を満たす方。適応の判断は担当医が行います。

2)がん遺伝子パネル検査について

がんは遺伝子の変異によって引き起こされる病気ですが、同じ臓器に発生しても、がん細胞に生じている遺伝子の変化は患者さんごとに異なります。すでに日常で行われている遺伝子検査は特定の遺伝子で起こっている一部の変異しか調べることができませんが、遺伝子パネル検査は、患者さんのがん組織や血液を用いて数十~数百の遺伝子変異について網羅的に解析を行います。そこで得られた遺伝子の変化の情報を利用し、がんの診断や治療法の選択に役立てることができます。
また、原発不明がんや希少がんの場合、治療法の選択に迷うことがありますが、本検査によってがんの原因になっている遺伝子の変化が推定されれば、その変異に基づいた治療(分子標的薬)が可能となる場合があります。標準治療に不応となった場合でも、がん細胞で起こっている遺伝子変化に対して効果が期待される治療薬の情報(臨床研究を含む)が得られる可能性があります。一方、本検査を利用しても患者さんのがんの診断や治療に有効な情報が得られない可能性もあります。

3)がん遺伝子パネル検査でわかること

遺伝子パネル検査を行うことで、患者さんのがん組織中に認められた遺伝子の変化が判明し、その変化に対して効果が期待できる治療薬や臨床試験の情報を得ることができます。得られた薬剤や臨床試験の情報の中には、国内では承認されていない薬剤や実施されていない臨床試験も含まれます。 本検査はがん関連遺伝子(体細胞遺伝子)を見つける検査ですが、数%で遺伝性疾患に関する遺伝子変異が見つかる可能性があるため、検査を受ける前に、その可能性について十分説明を受けておく必要があります。遺伝性疾患に関する遺伝子変異の情報の取り扱いには倫理的な細心の注意を払う必要があります。

4)検査で使用する検体について

本検査で使用する検体は、手術または生検時に採取された病理組織や、患者さん本人の血液を用います。保存された検体を使用する場合、検査に使用する検体の保管基準に沿ったものを使用します。

5)がん遺伝子パネル検査の流れ



3.受診手続について


1)他の医療機関に通院中の方

かかりつけの医療機関の担当医の先生にご相談ください。

2)本院に通院中の方

通院している診療科の担当医にご相談ください。

4.費用について

「がんゲノム医療」は保険診療で行われます。検査に対する保険点数は5万6千点(56万円)で、そのうち1-3割の自己負担がかかります。
遺伝子パネル検査の結果により、治療薬が示唆された場合でも、保険適応外の薬剤の場合、治療費も全額自己負担となる可能性があることを予めご了承ください。

5.本院で実施可能ながん遺伝子パネル検査


1. Foundation One CDx がんゲノムプロファイル

患者さんから採取した腫瘍組織検体から、がんの進行や治療に関連する324の遺伝子について、塩基置換、挿入・欠失、コピー数異常、及び再編成を、解析する遺伝子の領域を限定しないハイブリッドキャプチャー法を用いたシークエンスにより網羅的に一括検出及び変異解析します。

「FoundationOne CDx がんゲノムプロファイル」「FoundationOne Liquid CDx がんゲノムプロファイル」検査を受けられる方へ
中外製薬(株)提供『おしえて がんゲノム医療』より

2. FoundationOne Liquid CDx がんゲノムプロファイル

患者さんの血液検体に存在する遊離 DNA(cfDNA)から、がんの診断や治療に関連する324の遺伝子について、塩基置換、挿入/欠失、及び再編成を、解析する遺伝子の領域を限定しないハイブリッドキャプチャー法を用いたシークエンスにより包括的に一括検出及び変異解析します。

「FoundationOne CDx がんゲノムプロファイル」「FoundationOne Liquid CDx がんゲノムプロファイル」検査を受けられる方へ
中外製薬(株)提供『おしえて がんゲノム医療』より

3. OncoGuideTM NCCオンコパネルシステム

患者さんから採取した腫瘍組織検体から、がん関連の124遺伝子に関するプロファイルを取得し、データベースと照合して遺伝子異常(変異:SNV, InDel、増幅:CNA、再構成:Rearrangement)を検出し、その臨床情報と合わせて解析します。がん細胞の遺伝子と正常な細胞の遺伝子の両方を調べて比較し、がん細胞の遺伝子のみに生じている「がんの遺伝子変異」を区別します。

参考資料:がん遺伝子パネル検査(がんゲノムプロファイリング検査)のおはなし
参考資料:NCCオンコパネルシステム検査について知ってほしいこと
シスメックス株式会社提供

6.がん遺伝子パネル検査における注意事項

本検査はいまだ発展途上にあるため、従来の診療に比較して不確実な部分や、意に沿わない結果が得られる場合があります。以下に注意点として挙げますので、検査受診前に慎重に検討をして下さい。

1.がん遺伝子パネル検査の不確実性

がん遺伝子パネル検査は急速に発展した先進技術ですが、その反面、不確実性をはらんでいます。検査を行っても治療選択に役立つ情報が得られない可能性や、候補となる薬剤が見つかったとしても、それが適応外、未承認といった場合には使用できない場合があります。また、解析に用いた検体の品質によっては解析自体が不成功に終わってしまう可能性もあります。

2.遺伝学的検査・診断を実施する際に考慮すべき遺伝情報の特性

遺伝子には細胞の設計図のような役割があることから、DNAシークエンスによって人の個性がわかる場合があります。特にある特定の疾患が遺伝子配列によって規定される病気(遺伝病)が発見される場合があり、その場合は将来の病気の発症や、血縁関係のある家族の方への影響も考慮されます。ただし、がん細胞の遺伝子変異は一般には親から子に受け継がれたものではなく、生活の中で徐々に変異が起こっているもの(後天性)です。したがって、多くの場合、遺伝病の心配が生じることはありません。ただ、ある種のがんでは先天的な遺伝子の配列から発症しやすいもの(家族性腫瘍)があり、その場合には別の配慮が必要になります。このような遺伝子変異が見つかった場合、あなたは、結果開示を希望する権利と、結果開示を拒否する権利があり、その意思を「検査同意書」で確認いたします。遺伝子変異が見つかった場合、その結果を知ることで、今後発症するかもしれない病気の早期発見・早期治療に役に立つ可能性があります。一方、知ってしまったことで、あなたやあなたの家族が不安や精神的負担を感じる可能性もあります。

3.費用負担

本検査は保険診療で行われます。本検査の結果によって治療を行う場合は、あなたが現在治療を受けている病院の担当の先生と相談の上実施することになります。この検査で見つかる薬剤の中には、国内で承認されていない薬剤(未承認薬)や、国内で承認済みでも、あなたのがんに対しては保険適応されていない薬剤が含まれます。また、これらの薬剤を使用して治療を行う場合、保険診療の対象外となるため、高額な治療費の負担が必要となる場合があります。

4.代理人への結果の説明について

諸事情により、あなたへの説明が困難となった場合などは、事前にあなたに指定していただいた代わりの方(代理人)に結果を説明させていただくことがあります。そのため、あなたの結果を伝えてほしい代理人の方の名前と連絡先についても同意書に記載していただくことになりますのでご理解ください。

その他

がん遺伝子パネル検査にかかる関連資料(院内限定)※院外からはアクセスはできません。

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